症状がないという症状
早期発見がこれほど叫ばれるなかでどうして、すい臓がんの早期発見はこれほど困難なのでしょう? その理由のひとつに、すい臓がんにはこれといった症状がないことがあげられます。個人差がありますが、半数ほどの人に腹痛が起こることもありますが、残りの半数には症状はありません。その後、黄疸が現れ、食欲不振、背中の腰痛、全身倦怠、嘔吐などが生じることもありますが、これらはすい臓がん特有の症状とはいいがたいでしょう。
たとえば、肝臓がんの場合も、これといった特有の症状がありません。すい臓がんと同様、からだがだるい、腹痛が続く、おなかが張る、食欲不振などがあり、そうして体調の悪さに気づいたときにはかなり病気が進んでいて、転移した先で症状が出てやっと病気に気づくということが多々あるのです。
すい臓がんは、現在、画像診断法が進歩し、少しずつではありますが、早期発見の例もみられてきています。主な映像検査には、超音波検査、内視鏡的胆すい管造影検査、CTスキャン、血管造影検査などです。かつては、あらゆる検査を行って、全部の消化器を調べたうえで、消去法でようやくすい臓がんにたどりついたのです。それと比べればかなりの進歩といえそうですが・・・症状を自覚し、すい臓がんを疑ってかからないことには、これらの映像検査を受けないのではないでしょうか? そう考えると、やはり早期発見への道のりはまだまだ険しい気がしてなりません。
治療と生存率
すい臓がんの死亡率の高さは、かなり病気が進行するまで症状がなく早期発見が難しいことに加えて、すい臓という位置の複雑さゆえに治療が難しいということがありました。手術中の死亡率も高く、予後もよくなかったのです。しかし、現在は手術の指針が定まり、安全な手術が行われつつあります。
というのも、すい臓というのは、少しでも残っていれば本来の機能のかなりの割合を果たすことができるのです。消化機能も落ちる心配がないというのも不幸中の幸いかもしれません。そのため積極的に手術を行うようになっています。しかし、そもそも手術できるのは30パーセント程度なのです。
最近の治療法として比較的よい成績をあげているのは、術中照射というものです。回復して直接すい臓とその周辺に放射線を照射する方法です。
血管に入り込んでいる癌に対しては血管置換術が行われますが、こちらはあまり効果が期待できません。
予後は、あまり良いとはいえないようですが、早期発見によって癌が小さなうちに手術が行われる例も増えてきています。癌と診断されたあと、または手術後5年間経過したときに生存している人の率を五年生存率といいます。成人の場合、5年経過すれば、あとは生存率に大きな変化がみられないために、これを指標として用いることが多いのです。すい臓がんで、早期発見によって手術が可能だった場合、五年生存率は60パーセントを超えます。ただ一般には、五年生存率は手術を行った場合でも、10パーセント前後です。
すい臓がん
すい臓がんによる死亡者数は、年々増加の傾向にあります。日本人のがんのなかで最も多いといわれる胃がんでさえ、「早期発見」により完治さえ不可能ではなくなってきている現在にあって、どうしてすい臓がんの治療は進まないのでしょうか?すい臓には、これといって特有の症状がないため発見が遅れがちなことと、すい臓という臓器の位置が治療を難しくしているという理由があります。
すい臓はどこにあるのでしょうか?
すい臓は、みぞおちの奥、胃と脊髄の間にあります。片側には十二指腸、もう一方の端は脾臓に接しています。十二指腸側から、頭部、体部、尾部と呼ばれています。すい臓がんのほとんどはこの頭部部分、すい頭部に発生します。
すい頭部の役割
すい臓がんの多くが発生する、すい頭部というのは、膵液を十二指腸に運ぶ、すい管と、肝臓でつくられた胆汁を十二指腸に運ぶ役割をする胆管が合流する場所です。これがすい臓がんの治療を難しくし、また肝臓などへの転移を早める原因となっています。すい臓の周囲には、肝臓へいく肝動脈や腸へ行く上腸間膜動脈、胃や腸から肝臓へいく静脈である門脈が張り巡らされており、これらに癌が入り、肝臓などの臓器への転移を早めるのです。
これまで、すい臓がんというと、そうとわかったときにはすでに手の施しようがないことが多く、手術中の死亡率も高かったのですが、1980年に日本すい臓病研究会が手術の指針を決定して以来、現在では安全な手術が可能になってきています。
早期発見と検診
早期発見が叫ばれる癌ですが、ここでいう早期とは、この時期ならば治る可能性がある時期、という意味です。そのためそれぞれの癌によって、早期発見のめやすは違いがあります。また、癌の種類によって早期発見の容易さにもかなりの違いがあります。
癌は全部で50ほどあります。そのうち現在、8割ほどの癌は、診断技術も進み、早期診断すればたいてい発見できるようになりました。皮膚がん、乳がん、子宮がん、大腸がん、胃がん、前立腺がん、および膀胱がんなどがこれらの癌に属します。これらは比較的からだの表面に近い部位にできる癌で、患者自身に体調の変化を感じる症状が早期に出る癌です。そのため早めに精密検査を受けることになるため、発見も早期となる可能性が高いのです。
一方、体の奥にあるすい臓や肺の癌となると症状も出にくいので気づくのが遅くなりがちであるばかりでなく、精密検査をしても発見しにくい場合が多いのです。
乳がんは手で触れることができますから、自分で普段から気をつけることができます。しかし早期に発見さえできればかなりの生存が望める胃がんや子宮がんでさえ、初期どころか、かなり進行した癌でもほとんど症状がないこともあります。症状が出たときには手遅れです。そのため、症状のあるなしにかかわらず、40歳を過ぎたら癌年齢と考えてください。1年に2回、少なくとも1回、毎年、誕生日なら誕生日、と自分で決め、かならず検診を受けるようにしてください。
すい臓病
すい臓、といわれて、それがどのような働きをするのか、身体のどのあたりに位置するのか、答えられない人が多いのではないでしょうか? 近年、すい臓にかかる人が急増し、注目されています。しかし、すい臓は心臓や胃腸と比べ馴染みがありません。すい臓は身体の奥にあるため、異常があっても気づきにくいのが一般です。また異常が発生してからでは極めて治りにくく、症状に気づいたときには、すでに手遅れとなっていたということも多いのです。
戦前、わが国においてすい臓の病気は非常に珍しいものでした。ところが戦後、その患者数は急増しています。これはアルコール飲料が豊富に出回るようになり、食事が欧米化して脂肪の摂取量が多くなったことが原因です。
すい臓の病気には、すい炎やすい臓がんがあります。特にすい臓がんの患者数の増大は、注目されています。現在、わが国のすい臓がんの患者は年間、1万5000人くらいといわれています。わが国最多である胃がんが減少傾向にあるのに対して、すい臓がん、肺がん、大腸がんは増加傾向にあります。戦後間もない頃と比べると現在のすい臓がんによる死亡者数は25倍ほどにものぼるというから驚きます。すい炎とすい臓がんの発症について、何か因果関係があるのかどうか、はっきりしていません。ただすい炎の増加とすい臓がんの増加は比例しています。慢性すい炎ですい石のある人は、すい臓がんになる率が高い傾向があります。すい臓の病気についてはまだまだなぞの部分が多く、糖尿病などとの関係についても解明が待たれています。

