アルツハイマーとは
1905年、ドイツの病理学者アルツハイマーが進行性の記憶障害をともなった痴呆患者を報告しました。
このことが、アルツハイマー病の由来です。
アルツハイマーは45〜65歳に発病する大脳の萎縮性疾患で、痴呆に伴う失語、失行、失認がみられます。
高齢になるほど、発症率は高くなります。
しかし、現在は18歳〜64歳の若年層でアルツハイマーにかかる人もおり、年齢を問わずかかる病気と言えます。
アルツハイマーの初期症状は、頑固、自己中心的、人柄に繊細さがなくなるなどの軽度の人格変化、不安・抑うつ、睡眠障害、幻視妄想などです。
ごく初期の症状は本人も家族も気づかないほどの頭痛やちょっとしためまいのような、日常的によくある症状です。
やがて、不安感に駆られたり、夜眠れなくなることから、うつ病と勘違いしてしまう場合もあります。
アルツハイマーでの初期症状に気づき、早期からの対処により病状の進行を抑えることができます。
初期症状には、新しいことを覚えていられない、物や人の名まえが出なくなる、家事や仕事の段取りが悪くなる、物をどこに置いたか忘れるなどがあります。
家事や仕事の段取りが悪くなるとは、料理の手順を忘れたり間違える、同じ道を間違える、同じことを何度も尋ねる、駅で切符が買えないなどです。
現在では、初期に対応することで進行を抑えるだけでなく、本物のアルツハイマーへの移行を止めることもできるようになっています。
初期症状を見過ごさないことがこの病気では重要です。
アルツハイマーの原因
アルツハイマーの原因にはいくつかの説があります。
β(ベータ)アミロイドというタンパク質が脳内の組織に蓄積し、脳の神経細胞が死滅。
脳(特に大脳皮質)が極端に萎縮し、痴呆発症へ至るという説が有力です。
βアミロイドは正常な人においても合成、分泌されていますが、酵素によって分解され蓄積しません。
しかし、加齢に伴い分解が追いつかず蓄積されることがアルツハイマーの発症につながると考えられています。
大脳皮質などにできる染みのような老人斑という繊維状の物質の増加がアルツハイマーの原因とする説があります。
しかし、老人斑はアルツハイマーでない人にも多く見つかり、短期の記憶に関わる海馬ではあまり見られません。
そのため、この説は現在疑問視されています。
古くなった繊維状のタンパク質が細胞内にたまって固まった糸くずのような神経原繊維変化が原因だという説もあります。
アルツハイマーになった人の脳内神経細胞で神経原繊維変化は多く見られ、増加すると神経細胞は減少します。
しかし、老人斑と同じようにアルツハイマーでない人にも神経原繊維変化は見つかっています。
遺伝する家族性アルツハイマーでは、βアミロイドのもととなる物質であるアミロイド前駆体タンパク質(APP)遺伝子、プレセニリン1、プレセニリン2という遺伝子が、原因遺伝子であることが判っています。
APP遺伝子、プレセニリン1、プレセニリン2の変異がβアミロイドを増加させます。
そして、βアミロイドは神経細胞の中に蓄積して、アルツハイマーが発病すると考えられています。
また、神経伝達物質の異常、アルミニウム、活性酵素など様々な原因因子が考えられています。
しかし、原因が特定されていないのでいつアルツハイマーになってもおかしくありません。
初期症状を見逃さずないようにして、初期症状が起こった段階での治療が、症状の進行を防ぐのです。
アルツハイマーの症状の段階
アルツハイマーの症状には下記のような段階があると言われています。
・軽度認知障害(アルツハイマーの前触れ)
知的能力の低下の2〜3年前から、軽度の人格変化(頑固になる、自己中心的など)、不安・抑うつ、睡眠障害、幻視妄想などが起こります。
軽い物忘れがありますが、金銭の計算や車の運転など日常生活に支障がないため気づきにくいのです。
・アルツハイマー第一期
健忘期とも言われます。
健忘症状、空間的見当識障害(道に迷う)、多動・徘徊などが認められます。
大脳皮質の全般の機能が衰え始める時期で、単なる物忘れの度を越え始める時期でもあります。
・アルツハイマー第二期
混乱期とも呼ばれます。
大脳皮質の萎縮が進行して初期の症状が一層深刻化し、会話が困難になります。
高度の知的障害、失語、失行(方法はわかるのにできない、服の着方は知っているのに着ることができないなど)、失認(目では見えているのに、見えていると認識できない)が現れます。
錐体外路症状(スムーズな体の動きが取れない)はパーキンソン病と間違われることもあります。
・アルツハイマー第三期
臥床(がしょう)期とも言われています。
高度な痴呆の末期で、寝たきりとなり、しばしば失禁、拒食・過食、反復運動、けいれんなどが起こり、ことばも失われます。
身の回りのことができなくなるので生活全般において介護が必要となります。
高齢化のため介護に必要な期間が伸び、大きな社会問題となっています。
そのためにもアルツハイマーの初期症状を見逃さないようにすることが大切です。
アルツハイマーと診断されてから2年〜5年で感染症などにより亡くなると言われています。
初期症状で適切な治療を受けることは、あなたにもあなたの家族にも重要なことなのです。
認知症とアルツハイマー型認知症
認知症とは、脳の知的な働きが様々な病気によって低下し、記憶や判断力に障害が起こり、日常生活に支障をきたす状態を指します。
物忘れとは違い、体験の全てを忘れてしまうといった症状が起こります。
通常の老化よりも早いスピードで神経細胞が消失してしまうのが、認知症なのです。
認知症にはいくつかの原因がありますが、全体の8〜9割を占めると考えられているのは脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症です。
脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血など脳の血管に異常が起きたことによる認知症です。
アルツハイマー型認知症とは一般にアルツハイマーと呼ばれているものです。
脳がなんらかの原因で萎縮して、知的低下や人格の破壊が起こる認知症のひとつです。
この他、認知症には脳の後ろの病気から起こるレビー小体型認知症や、脳の前の部分の病気から起こる前頭側頭型認知症などがあります。
日本は超高齢社会となり、認知症にかかっている人の数も年々増加しています。
現在、85歳以上の3〜4人に1人は認知症だと言われています。
脳血管性認知症は脳梗塞などの病気にかからない生活習慣を心がけることで防ぐことができます。
アルツハイマー型認知症は、もの忘れなど初期症状で気づけば、アルツハイマーの進行や認知症への移行を防ぐことができます。
アルツハイマーだけでなく、認知症もまた初期症状で対処すれば悪化を防ぐこともできます。
おかしいと気づいたら、躊躇せず診察を受けるのが重要になります。
アルツハイマーの治療薬
現在、アルツハイマーの症状の不眠、易怒性、幻覚、妄想などに効果があり、病気をある程度遅らせる薬もでてきています。
初期症状での対処で深刻な事態を防ぐことができるようになっています。
アルツハイマーは、脳の神経伝達物質であるアセチルコリンの減少が見られます。
そのため、アセチルコリンを分解する酵素を阻害し、アセチルコリンを増やすドネペジル(製品名 アリセプト)という薬が日本で多くの人に使用されています。
この薬は脳内のアセチルコリンの量を増加させるだけでなく、病気の進行も遅らせることが分かってきています。
こうしてアルツハイマーの進行を防ぐことで、本来の天寿のまっとうできるようになっています。
失禁や徘徊など、家族にとって苦労の多い場面の軽減も考えられます。
アルツハイマーを根本的に治す薬がないからと絶望しなくても良いのです。
初期症状が出た段階で適切な治療を受け、薬の投与によって進行を食い止めることができるのです。
ドネペジル(アリセプト)を開発した製薬会社エーザイでは、次世代のアルツハイマー治療剤「E2012」の開発に向けて動き出しています。
E2012はβ(ベータ)アミロイドの生成プロセスに着目した治療剤で、アルツハイマーの症状の改善を目指しています。
アルツハイマーの原因究明のための研究は現在、世界中で行われています。
将来、アルツハイマー患者の利用しやすい貼り薬や治療薬ができることが望まれています。

